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野性の少年 (L' ENFANT SAUVAGE/ THE WILD CHILD) 1969 [や行の映画]

野性の少年.jpg モノクロームの異色作…? ( ´艸`)

ジャンル ドラマ
製作国 フランス
時間  86分

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フランス人医師ジャン・イタールが、19世紀初頭に発表した
「アヴェロンの野生児」をめぐる諸論考に基づく作品。
もともとトリュフォーは家庭や社会に受け入れられない子どもや、
他者との意思疎通に困難を抱える子どもに深い関心を抱いていた。
そうした関心傾向が、捕獲され一度は知的障碍と診断されるもイタールの努力により
多少の人間らしさを取り戻した野生児の実話に彼を惹きつけたのだった。
白黒で撮られた本作ではトリュフォー自らイタールを演じ、
見捨てられた子どもに教育を授け、愛情を注ぐ人物を演じる。
本作を観たスピルバーグは、『未知との遭遇』に俳優としてトリュフォーを起用した。
    (生誕90周年上映 フランソワ・トリュフォーの冒険 official website Program より)
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オープニング・クレジットでは、森閑とした中に響く鳥たちの鳴き声が心地良い…♪

“ジャン=ピエール・レオのために”

「これは実話である
 1798年の夏 フランスの森で物語は始まる」

ラコーヌの森にキノコ採りに来ていた婦人が・・・
異様な物音、奇声に驚き!? 取るものも取りあえず逃げ帰る。

・・・裸の少年が姿を現す…!

痩せた小柄な少年は… 婦人が投げ出した籠からキノコを貪り食うのだった。
少年は、まるで獣のような動きで…!?   森の中をすばやく移動し、木に登ったりする。

やがて、婦人の知らせで、追っ手(狩人3人)が犬を連れてやって来た。

少年は、放たれた犬どもに追い詰められて、とうとう捕獲されてしまうのだが…。
(少年と格闘した犬は、何故だか怯えていた…!?)

少年は穴に潜り込んだところを、煙で燻されて、捕らえられる。

・・・「年のころは11~12歳」「裸で耳は聞こえない…」「近くの村へ運んだ…」
等々… ジャン・イタール博士(フランソワ・トリュフォー)は新聞記事を音読する…?

“パリに連れて来て調べれば・・・”  と博士は思う…。
(潜在しているはずの “正常” な精神と “崇高” な人間性を育て上げようと試みたい…?)

・・・少年はボロを着せられ、藁まみれで、納屋に閉じ込められていた。
足首を紐で繋がれて…!

そこへ、婦人が役人を案内してやってくるのだが・・・
ドアを開けた途端! 少年が逃げ出した!?

四つん這いで村中を逃げ回るが、村人たちが寄ってたかって…! 袋叩きに…!?

すると、一人の老人が少年をかばって、優しく水場に連れて行ってやるのだった。

少年は水ガメに顔を突っ込み!? 水をがぶ飲みする…!
レミー老人(ポール・ヴィレ)は、その後も何かと少年を気に掛けてやる。

・・・少年(アヴェロンの野生児)に対する注目は、パリへの移送が決まると、最高潮に達した…!

県都ロデーズの駐在所に保護されている少年を、レミー老人が訪ねて…  何くれとなくお世話を…。
少年は、レミー老人になら暴れずに身を任せ…!?  スポンジで身体を拭かせるのだった。

・・・少年は、パリの “国立聾唖(ろうあ)学校” に送られた。

到着した馬車の周りを、物見高い人々が取り囲む。
ジャン・イタール博士と、その上司のフィリップ・ピネル博士(ジャン・ダステ)が少年を出迎えた。

学校の敷地内に入ると、今度は生徒たちが群がり騒ぎ出す…!

イタール医師とピネル教授が、少年を押さえつけながら身体検査をしている間・・・
そばで見守っているレミー老人は居たたまれないような風情…?

そこへ、窓から石が放り込まれ!?  ドスンと大きな音がしたのだが・・・
少年に変化はなく…? 「耳が悪い」と思われ…!? 
ドアの開閉音で再度確かめてみるが、やはり動きは無かった。

ところが、そこへ…! レミー老人が口を挟む。
「誰かが後ろでクルミを割ると振り向きました」

“大きな音には無関心 しかし背後でクルミを割ると振り向く”
…と、ピネル教授は書記に記述させる。

診察台に寝かされた少年を、二人の博士が詳しく診ていく。

イタール医師は、裸の少年の傷痕を数え上げ・・・ (およそ15ヶ所)
「獣の “かみ傷” が多い… 獣を殺し生きていた…」と。

ピネル教授は、「身体の傷が戦いの様子を物語る」と言ってから、首元の傷に着目し・・・
「他と違う傷痕がある… 首の動脈の辺りに4センチに渡る癒着の後が…! 傷口が塞がった跡だ…」
と、記述させてから・・・

「殺すつもりで捨てたという事だ」と言うと、イタールも同意する。
それは、おそらく3~4歳の頃…?  ということで落ち着くのだが・・・。

その時、少年は “姿見” の前で不思議な動きをしていた!?
ふと思いついたイタール医師が・・・
少年の背後に立ち、その動きに合わせて手にしたリンゴを動かすと…?
少年はリンゴを欲しがって! しばらくもがいてから、奪い取ってかぶり付く…!

・・・ろうあ学校では、少年を他の生徒たちと一緒に扱っていた…!?

時には、見物の一団を学校内に入れて…! 
少年を “見世物” のようにして小遣い稼ぎをする者も…!?(爆)

・・・ある時、生徒たちからイジメに遭っている “少年” をイタール医師が助け出した。

ピネル教授の「動物以下だから仕方ない」と言う言葉に…?
「しかし動物でも保護し 訓練します」とイタール医師は答えたが・・・
ピネル教授は更に…
「この子は知的障害だ」と言って、知的障害者の施設に入れる事を提案する…。

その後、二者間での率直な会話を経て・・・ 
イタール医師の「教育してみたい」の一言で、少年を引き取ることが決まった。
バティニョールの自宅で、家政婦のゲラン夫人(フランソワーズ・セーニエ)にお世話を頼む… と。

「私は “保護権” を得… ゲラン夫人は慰労金150フランを受けた」

こうして…
パリ郊外の自然の中で… “ヴィクトール” (ジャン=ピエール・カルゴル)の “教育” が始まった。

さて・・・? 

映画館で購入の… トリュフォーの言葉のみで構成されている “白い御本” によりますと・・・

「大人は判ってくれない(1959)」
「華氏451(1966)」
「野性の少年(1969)」

は同じグループ? なのだそうです。

「どれも社会生活からの疎外感をテーマにした作品といえる   by フランソワ・トリュフォー」

自分の意志でなく、環境その他の理由で? 疎外されてしまった存在… ということでしょうか…
監督の思い入れの強さが伝わります…  だから冒頭に “ジャン=ピエール・レオ” なのですね…!? w
私めは「華氏451」は未見ですので、今後の鑑賞がとても楽しみになりました。

閑話休題?

“アヴェロンの野生児” が、ヴィクトールと名付けられた時のエピソードも感動的なものでしたが…!

ともかく…
“すべてが初体験” の子どもを導いていく事の困難さを、手短に? 上手く表現していたと思われまする。

また、それに応えた “ジャン=ピエール・カルゴル” の素晴らしさにも感動を覚えます。

四つん這いで移動する時の “俊敏さ” もさることながら…?
人間的でない?視線の投げ方?は、教えて出来るものじゃない!? 等と思ってしまう程でした。

彼は本作がデビューで、これ1作しかない… という稀な存在です。(;^_^A
それは、お世話係のゲラン夫人を演じたフランソワーズ・セーニエも同様のようですが…?

そして、余談になりますが…
アイリスショット(iris shot) が効果的に使われている映画でもありましたね。

「アイリスショットは、無声映画やテレビで、シーンの詳細を他の何よりも強調するために、
 一般的にはシーンを終了または開くために使用される手法…
 フィルムカメラの虹彩はゆっくりと閉じたり開いたりするため、
 フィルムに表示されているものは黒で囲まれた減少または増加する円で表示されます。」
                             (英字のWikipedia より)

更に? 引きの画というのか?
とてもダイナミックな印象のシーンを、度々観る事となりました。
巧いな~ という言葉しか浮かばない 盆暗ちゃんの自分で歯痒い思いなのですが… (^_^ゝ

俯瞰からの視点で…? 森の中の1点から人々の動きが始まる瞬間とか…?
はたまた…
木の上の少年からスーッとカメラが引いていくと、途轍もなく大きな樹木の広がりが…!  とか?
う~ん これでは上手く伝わらないかな? (;^_^A

ともかく、何とも不思議な快感を覚えた♪ というのは確かなことで…!!
モノクロならではの “効果” なのかも知れませぬが?
なめらかな “視線の誘導” に感服♪ と言う感じでしたね~ w

鑑賞する前は…? 
奇妙なものまで見る羽目になってしまったものだな… 等と、期待感ゼロの自分でしたが…!? (爆)
得るものが多くて吃驚!? の態でございます。(汗)

フランソワ・トリュフォーの顔も見慣れてきましたし…!
彼の早口にも吃驚はしませんでしたけれど…? ( ´艸`)
この医師の役は他の人には任せられなかった…  というのはわかる気がしました。

チャプター(参考までに)
1.真実の記録
2.捜索と捕獲
3.アヴェロンの野性児
4.詳しい検査
5.物見高い人々
6.教育の始まり
7.野原を駆ける
8.「お前はヴィクトールだ」
9.一進一退
10.聴覚の開発
11.新たな訓練
12.「言葉は音楽だ」
13.“牛乳”
14.知性の目覚め
15.希望に向かって
16.エンディング・クレジット

ジャン=ピエール・カルゴル(ヴィクトール) “アヴェロンの野生児”
フランソワ・トリュフォー(ジャン・イタール) ヴィクトールを引き取る医学博士
ジャン・ダステ(フィリップ・ピネル) ジャン・イタール博士の上役の教授
フランソワーズ・セーニエ(ゲラン夫人) ジャン・イタール博士の家政婦 少年のお世話係
ポール・ヴィレ(レミー) 野性の少年が心を許す老人

撮影 ネストール・アルメンドロス
脚本 ジャン・グリュオー
監督・脚本 フランソワ・トリュフォー

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青山実花

これも観たい映画です^^
テーマも、
とっても興味深いです^^
by 青山実花 (2023-05-15 07:11) 

Labyrinth

青山実花 さん (^_^)ノ
ヴィクトールというか、モデルのお子さんは40歳?まで生きたそうですけれど
やはり普通の会話ができるようにはならず…?
幼児期の教育がどれだけ大切か!?という証明にはなった…?とか何とか…?
うろ覚えですが、トリュフォーの御本に…!
成人してからも?お世話係のご婦人と特別な施設でゆっくりと過ごしたそうで…
何よりの事だな と余所事ながら思いました。
これはご経験豊かな青山実花さまにも何らかの驚きをもたらすかも…!? です。w
by Labyrinth (2023-05-15 14:33) 

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